yamachanのメモ

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予算要求に向けて読書3冊

自治体は予算要求の時期というわけで、家にある自治体予算や地方財政に関する本を読んでみた

自治体の予算要求 考え方・つくり方

自治体の予算要求 考え方・つくり方

 

 まずは、吉田博・小島卓弥〔編著〕『自治体の予算要求 考え方・つくり方』。

 本来なら、予算要求時期の一歩手前に読んだ方がいい本だけど、予算要求にあたってはとりあえず本書を読むのがいいだろう。自治体職員は、まずは次の言葉を理解しておくべき。

多くの関係者に納得できる予算を編成する鍵の一つは、予算が、関係する人と地域の、そして現在と未来も含めての全体最適を実現しようとするものであり、その実現を図るパーツとして、個別事業が展開されている、という理解が広められるかではないだろうか。(38)

 そして、最近、「民主主義」という概念について考えている僕にとって、「査定は、民主主義を具現化するための準備作業である」(135)という指摘は、大変興味深いものだった。職員一人一人がそういう姿勢で予算要求に挑めるような姿勢づくりができないかな、とか考えたりする。

 

 次に読んだのが、『自治体の予算編成改革-新たな潮流と手法の効果』。

自治体の予算編成改革―新たな潮流と手法の効果―

自治体の予算編成改革―新たな潮流と手法の効果―

 

  時間がない人でも、稲沢克祐氏による第1章「変貌する都市自治体の予算編成」を読むべきだろう。稲沢氏は、群馬県庁に15年間勤務されていた方で、このような実務経験がある方が説明する理論的側面は非常に重要だと思う。実務において役立つ「枠組み」を与えてくれるからだ。

 余裕があるなら、第2章以降も参考になるのでぜひ読んでほしい。なぜ参考になるかと言えば、自分たちの作業の「当たり前」を疑うことができるからだ。予算編成と一言で言っても、その在り方は多様であり、具体的な業務改善とまではいかなくても、その多様性を理解することで仕事の「幅」を広げることができる。僕は、業務改善という大きなことよりも、たとえ小さなことであっても「幅」を広げていくことが大事だと考えている。

 

最後は、神野直彦・小西砂千夫『日本の地方財政』。 

日本の地方財政

日本の地方財政

 

  本書は、予算要求に「直接」役立つものでもなく、日々の実務においても「直接」役立つものではないかもしれない。でも、地方財政の理論を学ぶことで、予算要求と向き合うための「知」、日々の実務と向き合うための「知」を学ぶことができる…ということを考えながら読んでいたら、本書の「終章」で次のようなことが書かれていた。

地方財政の共同意思決定者として、地方財政論を学ぶということは、自己の「生」と関連づけなければならないことを意味する。地方公務員であっても社会の構成員として共同意思決定者となる。したがって、すべての社会の構成員が地方財政論を自己の「生」と関連づけて学ぶ必要がある。(219)

地方財政結果責任は、地域社会の構成員である住民が引き受ける。地方財政に無関心で共同意思決定に参加したという自覚がなかったとしても結果責任は必ず住民に降り掛かってくる。自分は無力であることが、責任を逃れる理由とはならないのである。(220)

 そう、地方公務員だけではなく、地域社会構成員にも(にこそ!)読んでほしい一冊である。「民主主義」という概念に注目が集まる中、ジェームズ・ブライスが述べているように「地方自治は民主主義の学校である」のだから、より多くの人が、身近な問題である(けれども複雑な)地方財政について学び、地域社会と向き合ってほしい。

 

 職場に置いている本も持って帰ってきて再読しよ。