yamachanのメモ

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『最前線のリーダーシップ』から学ぶ

数年前から気になっていたけど読まずにいた、ロナルド・A・ハイフェッツ/マーティ・リンスキー『最前線のリーダーシップ』をついに読んだ。

最前線のリーダーシップ

最前線のリーダーシップ

 

そもそも本書を読もうと思ったきっかけは、『地方財務 2012.5月号』の特集「財政課の仕事 その心得とおすすめ図書」のなかで、「仕組みを変える・変化が生じる際に遭うであろう強い反対を乗り切るためにも、変革プロセスの最前線にいる方に読んでもらいたい一冊だ」(25-26)と紹介されていたことである。

そして、とあることがきっかけで、「今こそこの本を読まなくては」と思い、読み始めた。読んだ結果、監訳者の竹中平蔵氏が指摘しているように、「本書ほど、このリーダーシップの本質的な作業を包括的かつ詳細に扱い、多くの実践的な技術を伝える本は他にない」ものであり、だからこそ、「ビジネスパーソンや政治・行政に携わる人々はもとより、自分の組織や社会、自分の周りの人間関係を変えたいという思いを持つすべての日本人に読んでいただきたい」(3)一冊だと思った。

さて、本書のポイントは、「技術的な問題」と「適応を必要とする問題」という概念である。

組織や社会が抱える問題のすべてについて正解がわかっているなら、リーダーシップに危険なことなど何もない。実際のところ、日々取り組んでいる問題のなかには、解き方がすでにわかっているものも多い。本書では、 これを「技術的な問題」と呼ぶ。

一方で、いくらその道の権威や専門家であっても、既成の手段では解決できない問題も存在する。こうした問題に対応するには、組織あるいは地域社会の至る所で、実験的な取り組み、新たな発見、そしてそれに基づく行動の修正を繰り返さなければならない。本書では、これを「適応を必要とする問題」と呼ぶ。(29)

まずは、この「技術的な問題」と「適応を必要とする問題」との違いを認識し、それぞれの問題に対して、なすべき仕事は何かを考えなくてはいけない。そして本書は、「適応を必要とする問題」に立ち向かう実践的な技術を教えてくれるのである。

個人的に、特に興味深かったのは、「第6章 当事者に作業を投げ返す」で紹介されている「1歩引く勇気を持つ」(178~)ということである。

いままでに犯した失敗をかんがえてみてほしい。問題を自分自身で引き受けてしまいたいという誘惑から逃れてその問題を自分の外に追いやることが、いかに難しいかを痛感するはずだ。人々は、あなたにその問題の真ん中に入って それを直すこと、立ち上がって問題を解決することを期待する。結局のところ、それが権威のある立場にいる人間が支払っている対価なのだ。

そういった期待を満たしたとき、勇気に満ちた立派な人間だと言われるだろう。しかしそれはお世辞にすぎない。彼らの自分に対する期待や依存心に挑むことのほうが、よっぽど勇気が必要なのだ。(181)

 いやー、これは本当にその通りだな、と思った。本書ではNBAでのエピソードを取り上げてこのことを説明しているので、是非読んでほしい。そして、本章の末尾には「問題の外側に身を置くために最も適した方法は、問題に対して責任を負うべき人々に対して、その問題に対処する作業を投げ返すことである」(198)という指摘がある。僕は、「問題の外側に身を置くこと」は卑怯だと思っていた。しかし、本書を読むことで、必ずしもそうとは言えないということを理解できた。「逃げる」のではなく、「挑む」精神と勇気をもって、「問題の外側に身を置く」ということを実践していきたい。