yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

ハイエク「知識人と社会主義」

 ハイエクが語る「思想の力」は、これからの「リベラル」を考える上でも重要だと思うのでメモ。

 実際、目下のところ、自由社会のさらなる発展のための哲学的基礎付けという不可欠な作業ほど報われないものは他にないだろう。この作業にとりくむ者は、既成秩序の体制を受けいれなければならないわけだから、もっと大がかりな思索を好む知識人の目には単に現状を擁護するだけの臆病者と映り、同時に、実務家からは、非実用的な単なる理論家として無視されるようになる。(『ハイエク全集 社会主義と戦争』22)

  社会主義者の成功から真の自由主義者が学ぶべき最大の教訓は、夢想家(ユートピアン)になることを恐れぬ勇気をもつことだ。それによって、自由主義者は知識人から支持され、世論に影響を与え、ついこのあいだまで実現不可能だと考えられていたことを可能にすることができる。世論のあり様を前提に、実現可能と考えられていることだけにかかわってきた人びとは、世論を先導するという努力を怠るために、世論が変化すれば、それすらも政治的に不可能になってしまったことを知ることになる。自由社会の哲学的基盤の構築を、再度、興味あふれる知的問題とし、その実現をもっとも活動的な知性の創意と想像力をかきたてる課題にすることができなければ、自由の将来は本当に暗いものになってしまうだろう。しかし、最盛期にある自由主義の特徴である思想の力への信頼をとりもどすことができるならば、われわれは戦いに負けはしない。(26-7)

社会主義と戦争 (ハイエク全集 第2期)

社会主義と戦争 (ハイエク全集 第2期)