yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

西尾勝『行政学』「第5章 現代国家の政府体系」メモ

・中央地方関係の類型
 アングロ・サクソン型=分権・分離型(イギリスを母国として英連邦諸国、アメリカに普及)
 ヨーロッパ大陸型=集権・融合型(フランスを母国としてラテン諸国、ゲルマン諸国に普及)

分権・分離型の市町村の自治権は、事務権限の範囲については集権・融合型の場合よりも狭くなる蓋然性が高いが、授権された範囲内の事務権限を執行する際の行動の自由、自主的な裁量の余地は集権・融合型の場合よりも広くなる蓋然性が高い、といえるであろう。いいかえれば、分権・分離型の下での市町村の自治権は量において小さく質において高くなる可能性をもつのに対して、集権・融合型の下での市町村の自治権はこれとは逆に、量において大きく質において低いものになる可能性をもつ、ということになろう(65-6)。

→市町村の面積・人口規模の大小等も含めて総合的に考察する必要。

・集権型の分権化:西ドイツが戦後改革で連邦制を採用し、地方自治を強化。フランスではミッテランが大統領に就任して以来、道と県を完全自治体に改める分権化の動きが起こった。

・分権型の融合化:アングロ・サクソン系の諸国では、国の事務権限を自治体に委任するようになり、自治体に対する中央政府の各省による行政的統制が強められた。

自治体の行政活動の膨張:福祉国家の出現により、自治体の行政活動が中央政府を上回る速度で膨張。その要因は、①行政活動の対象集団が大規模であれば、実施業務に関して地方出先機関に所管させるか、自治体に授権または委任せざるをえない。②第一線職員の裁量の余地が広い場合には、その執務状態を統制するにあたって、民主的統制観点・地域総合行政の観点から、自治体に授権または委任すること合理的である。③福祉国家段階における行政活動は対人サービスが多く、個性と個別事情に適切に対応する必要がある。

・新中央集権:現代国家は行政サービスの多くについてナショナル・ミニマムを設定してその達成をめざしているので、中央政府は法令等により、自治体に対してその遵守を要請。また、中央政府の財源を地方政府に配分する方式を操作することで、自治体の行動を誘導しようとしている。このような現象を新中央集権と呼ぶ。

 

参考1:神野直彦『財政学』

日本の中央政府と地方政府の政府間財政関係は、中央政府が決定し、それを地方政府が執行するというものである。公共サービスを、主として中央政府が供給していれば「集中」、主として地方政府が供給していれば「分散」とすると、日本の政府間財政関係は、明らかに分散システムである。しかし、公共サービスの供給と負担に関する決定を、主として中央政府が実施していれば「集権」、主として地方政府が実施していれば「分権」をすれば、日本の政府間財政関係は、明らかに集権システムなのである。
つまり、日本の政府間財政関係は決定は中央政府、執行は地方政府という集権的分散システムなのである。20世紀末から地方分権パラダイムに転換していくとすれば、日本での地方分権の課題は、集権的分散システムを分権的分散システムに切り換えることになる(295-6)。

 

参考2:菅直人『大臣 増補版』

主権者である国民が自治体の議員や首長を選挙で選び、その議会が条例を制定することは、今は多くの国で認められている。自治体にも独自の立法権があり、当然独自の行政権はある。実際に、憲法では第八章を「地方自治」としており、地方自治体の自治権を保障している。
この点については、大森内閣法制局長官が次のように答弁した。
憲法第六十五条の「行政権は、内閣に属する。」というその意味は、行政権は原則として内閣に属するんだ。逆に言いますと、地方公共団体に属する地方行政執行権を除いた意味における行政の主体は、最高行政機関としては内閣である、それが三権分立の一翼を担うんだという意味に解されております」
これは従来の官僚の見解を大きく変えるものだった。これまでは、地方自治体の行政権も内閣の行政権の内側、つまり下位にあるとしていたのだ。それが、地方分権が進まない原因でもあったのだ(33-4)。