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林誠『my公務員BOOK「係長」』

 所沢市職員であり、数多くの書籍を出版している林誠さんの新著は、係長に求められる役割、スキル、心構えを説く本だ。必要に応じて記録やメモができるようになっており、自分だけのノートとして活用できる仕組みになっている。
 本書を読み始めて印象的なことは、「人に関することに気を遣う必要がぐっと増えました」(5)という言葉が「はじめに」で出てくることだ。職場では、個人として仕事ができること、ここに注目が集まりがちであり、もちろんそれも重要なことであるが、同じくらい、いやさらに重要なのが「気づかい」「気配り」である。

 著者は、「係長の3原則」として次のことを掲げる(14)。

1 係長はプレイングマネージャーである
2 成果を上げ、変化を起こす
3 部下の育成に責任を持つ

 これらの原則の背景には、「個人」だけではなく、「係」「メンバー」「チーム」としてのパフォーマンスの向上が重要であるという考えがある。言い換えると、「普段からしっかりバックアップ体制を取り、補い合えるような仕組み」(96)を整えておくことが大切ということだ。
 以上のことは、次の「係長の「べからず」」についても同様である。

○判断から逃げるべからず
○仕事を抱えるべからず
○情報をためるべからず

 もちろん、このような心構えだけではなく、係長として必要な知識についても説明があり、読者それぞれがメモできる仕様になっている。例えば、「予算を知る」の具体的なチック項目は次の通りである(57)。

□税収の占める割合は?
地方交付税はいくら計上されているか?
□目的別で最も大きい款は?
□地方債残高は?
□財政調整基金残高は?
□経常支出比率は?*1

地方交付税、地方債、財政調整基金といった用語自体を理解しておらず、説明できない係長も少なくないと思うが、これからの係長は「それで良し」としない気負いと、「財政についての本に目を通し、理解を深め」(75)ようとする意欲を持たなければならない。
 本書の「係長の引き出し」というコラムでは、「日曜夜のエナジーチャージ」「落ち込んだときの心の支え」「いつもと違う世界を知ってみる」「明日の教養」として、著者がオススメする本や映画、ニュース番組が紹介されている。この「引き出し」で特徴的なことが、いわゆる「公務員の本」ではなく、小説やビジネス書が取り上げられているところであり、著者の教養の深さがうかがえる。係長の実用書としてだけではなく、社会人の教養書として楽しく読むことができ、役立つ一冊である。

my公務員BOOK 「係長」

my公務員BOOK 「係長」

  • 作者:林 誠
  • 発売日: 2021/03/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

*1:正しくは、「経常収支比率」と思われる。