yamachanのメモ

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稲葉振一郎「「ネオリベ」批判を越えて」(『論座2005.7』)

稲葉振一郎氏は、「新自由主義新保守主義は、内政、社会経済政策における『小さな政府』論、市場原理主義と、外交におけるタカ派リアリズムとの混合物である」という「ケインズ主義の黄昏とネオリベラルの勝利のお話」(69)を批判的に捉えることから、リベラリズム復活の可能性を探ろうとする。

具体的には、「ケインズ主義的福祉国家」の没落は、歴史的・構造的に必然的なものではないことから、「ケインズ主義的福祉国家」と「ネオリベラリズムの台頭」との間には明確な対応関係がないことを説いている。つまり、「内政レベルでの「新自由主義」と、タカ派外交路線まで含めての「新保守主義」との間にも、予定調和的な対応はない」(70)ということである。

そして、当時における「ネオリベ」批判が、タカ派外交と自由市場主義をワンセットとして想定していたこと、また、「ケインズ主義的福祉国家は反市場、つまり市場に抗するものである」と捉えたこと、この「二重の錯誤」が、リベラルの障害となっていると指摘している(71)。

稲葉氏によるこのネオリベ批判を解体しようとする作業は、ネオリベ批判が繰り広げられている現代においても重要である。