yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

民法と自治体契約実務(請負)についてメモ

1 民法の性質*1
(1)民法は私法の一つである
 公法とは、国や公共団体の内部や相互間の関係を規律するルール、および、それらと私人との関係を規律するルール。私法とは私人相互間の関係を規律するルール。

(2)民法は一般法である
 上記の商法等(特別法)は、民法(一般法)が規律する関係のうち特定の関係について特別な規律を行うために作られているものであり、民法に対する例外として位置付けられる。

(3)民法は実体法である
 実体法とは権利・義務の所在を定めるルールであり、手続法とは実体法によって存在の確認された権利の強制的実現に関するルールである。


2 民法の難しさ*2
(1)言葉の問題
 様々なシチュエーションに適用される性質を有しているので、規定の仕方が抽象的になることから、民法で使用されている言葉は日常用語ではなく難しい。

(2)形式の問題
 1つの法律問題を解決するのに必要な条文が、様々なところに散らばっているので、いろいろな箇所からいろいろな条文を引っ張ってこないと、一つの法律問題が解決できない。


3 民法自治体契約実務*3
(1)民法地方自治法
 自治体契約は、民法の規定が適用され、地方自治法の規定により実務が行われる。民法第521条~696条と地方自治法第234条~234条の3を確認すること。

(2)契約の基本原則
 契約の原則として、①契約締結の自由:契約自体を締結するか締結しないかを自由に決定できる原則、②相手方選択自由の原則:契約の相手方を自由に決定できる原則、③内容自由の原則:契約内容を自由に決定できる原則、④方法自由の原則:口頭によるか書面によるかなど、契約の方法を自由にできる原則がある。

(3)自治体固有の契約自由の原則に対する制約
 契約自由の原則に対する自治体固有の制約として、①契約相手方選択自由に対する制約:自治体の契約は公平性の確保から、契約の相手方を自由に選ぶことはできず、経済性の確保から、自治体に有利な価格を提示した相手方と契約を締結するのが基本、②契約方式の自由に対する制約:自治体の長が相手方となり、契約書を作成、記名捺印して契約が成立(地方自治法234条第5項)がある。


4 役務を提供するための契約*4
(1)契約類型
 役務を提供するための契約には、①請負:労務の成果の給付(仕事の完成)を目的としている、②雇用:労務それ自体の給付を目的とし、その労務の給付が使用者の指揮・命令のもとに行われる、③委任:労務それ自体の給付を目的とし、労務供給者の一定の裁量のもとで行われる、④寄託:他人のために物を保管することを目的とする、がある。

(2)請負契約と担保責任
 請負人の担保責任について、平成29年改正前の旧民法では瑕疵担保責任(旧民法第570条)の規定があったが、新民法においては一般的な債務不履行の仕組みが準用される(559条)。具体的には、①追完請求(562条)②報酬(代金)減額請求(563条)、③損害賠償請求(415条)、④契約解除(541条、542条)が準用される。
なお、①の追完請求をしても追完が行われないときには②の報酬(代金)の減額請求をすることができ、これらの権利を行使しても、③の損害賠償請求・④の契約の解除も可能である(564条)。
 請負の報酬については、①仕事が完成しない理由が注文者にあるとき、請負人は全額請求でき(562条)、②仕事が完成しない理由が注文者にないとき(請負人に理由がある、両者に理由がない)、または請負契約が仕事の完成前に解除されたときは、可分な部分について、注文者は受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる(634条)。
 請負人の担保責任には制限があり、注文者が提供した材料の性質や指図を理由として、請負人が引き渡した目的物の種類や品質(「数量」は含まれていない)に関して契約の内容に適合していなかった場合は、追完請求、報酬(代金)減額請求、損害賠償請求、契約解除ができないこととされている(636条)。

 

*1:道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門[第4版]』7~

*2:『リーガルベイシス民法入門[第4版]』13~

*3:樋口満雄『図解よくわかる 自治体契約事務のしくみ』55

*4:道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門[第4版]』192~