『ハイエク、ハイエクを語る』の中で、ハイエクがシュンペーターの理論とハイエク自身の理論との関係について語っている箇所が興味深いのでメモ。
予言の性格がどこか似ています。しかしシュンペーターはパラドクスを心から楽しんでいるのです。彼は、資本主義は明らかにずっとよいものだが存続を許されず、社会主義は悪いものだが不可避的にやってくる、といって人々にショックを与えたかったのです。あれは、彼がまさに好んだ種類のパラドクスです。
その背後には、一定の意見の流れーそれにたいする彼の観察は正しいのですがーが元に戻せないものなのだ、という発想があります。彼は逆のことを主張してはいますが、最後のところで彼は、[流れを変える]議論の力を本当はまったく信じていなかったのです。事態のあり方が人々に特定の考え方を強制することを、彼は当然の前提にしていました。
これは基本的なところで誤っています。一定の条件下にある人々が一定のものを信じることを必然にするものは何か、を簡単に理解することなどできません。思想の進化は、それ自体の法則をもち、われわれが予測できない様々な発展に大きく依存します。私が言いたいのは、私は人々の意見を一定の方向に動かそうと試みていますが、それが実際にどの方向に動くかを予測するだけの勇気はもちません。自分がそれを少し変えることができれば、と考えているだけです。しかしシュンペーターの態度は、理性の働きに対する完全な絶望と幻滅でした。(205)
ハイエクとシュンペーターとの共通点と差異について、今後整理していきたい。
- 作者: スティーヴンクレスゲ,ライフウェナー,Stephen Kresge,Leif Wenar,嶋津格
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2000/02/01
- メディア: 単行本
- クリック: 11回
- この商品を含むブログ (1件) を見る