yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

西山雄二〔編著〕『いま言葉で息をするために-ウイルス時代の人文知』

本書は、新型コロナウイルスの感染拡大により、人間・社会のあり方が大きく変化していく状況下において、欧米で発表された論考とそれぞれの論考に対する訳者課題を収録したものである。訳者解題では、執筆者の思想や論考に対する解説が論じられており、本書…

小紫雅史『地方公務員の新しいキャリアデザイン』

奈良県生駒市長で多数の書籍も出版している、小紫雅史氏の新著は、『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』から発展しつつ、キャリアデザインの観点から、公務員の「在り方」「生き方」を説いている。個人的に関心を持った箇所か…

ジョルジョ・アガンベン『私たちはどこにいるのか?-政治としてのエピデミック』

ジョルジョ・アガンベン『私たちはどこにいるのか』は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて書かれた論考が収録されている。アガンベンが前書きでも触れているように、本書の要点は「パンデミックと言われているものの倫理的・政治的帰結について省察しよ…

鎌田華乃子『コミュニティ・オーガナイジング-ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』

「「仕方がない」と諦めてしまうのではなく、「仕方がある」ことを知り、小さな行動を起こそうと思える」(1)、本書はこの「大きな」一歩を踏み出すためのきっかけを与えてくれる。その方法が、タイトルにもなっている「コミュニティ・オーガナイジング」で…

ジャン=リュック・ナンシー『あまりに人間的なウイルス-COVID-19の哲学』

「哲学は、その「形式」を、つまり「文体」を、つまり結局はその指し向けを渇望している。いかにして思考は自らを-思考に-差し向けるのか?」*1。本書の著者ジャン=リュック・ナンシーは、独自の文体によって、私たちが直面している新型コロナウイルス感…

エンツォ・トラヴェルソ『ポピュリズムとファシズム-21世紀の全体主義のゆくえ』

著者は、ヨーロッパとアメリカで「現在台頭しているポピュリズム、二一世紀の極右勢力」を、「ポスト・ファシズム」(7)と位置づける。なぜ、「ポスト」なのか。それは、生物学的人種主義、軍国主義・帝国主義といった特徴を有するファシズムの概念は「新し…

上野千鶴子・鈴木涼美『限界から始まる』

かつて細見和之さんは「書簡文化の終焉」を語ったことがあるが*1、本書が企画され、公開されることを前提とした、そして編集者を介した「往復書簡」であったとしても、「書簡」という形式だからこそ語ることができた、語ることになったことがあるだろう本書…

谷川嘉浩『信仰と想像力の哲学-ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』

研究者ではない読者にとって、ジョン・デューイから連想するのは「哲学者、心理学者、社会科学者、教育学者、教育者、アクティヴィスト」(2)という側面であろう。本書は、これら多様な側面を描きつつ、デューイの宗教論に光を与えるものである。デューイと…