yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤恭彦「税と平等」(新村聡・田上孝一[編著]『平等の哲学入門』)

「租税は平等を実現するための(多くの場合、不平等な)手段なのである」(369)と、税がもたらす平等/不平等について著者は論じている。つまり、課税は不平等であるが、この不平等な課税は、平等という社会状態を実現する限りにおいて正当化されるというこ…

アレクサンドル・コイレ「イェーナのヘーゲル」

コイレは、「この時期(イェーナ期)の知的作業はとくに熱烈に肥沃」であり、「決定的な形成期であり、この期間にヘーゲルは自らの武器を鍛えあげる」(103)と述べる*1。 まず、本論文で注目すべき概念の一つに「不安定(l'inquiétude)」がある。「この不…

稲葉振一郎『不平等との闘い-ルソーからピケティまで』

副題に「ルソーからピケティまで」とあるように、不平等の歴史的な展開を紐解いている。さらに、「経済学以前の政治思想から始めて、現代の経済学までにいたる不平等分析を主としてその理論面に焦点を当てて概観してきました」(244)と著者の稲葉氏自身も述…

齋藤純一『不平等を考える-政治理論入門』

拡大する格差、社会統合の綻び、政治の不安定化といった諸問題に対して、本書は「市民として」という観点からアプローチしている。「市民として」とは、「社会の制度を他者と共有し、その制度のあり方を決めることができる立場にある者として」(13)という…

L・マーフィー/T・ネーゲル『税と正義』

「私的所有は部分的に租税システムによって定義される法的な慣習(convention)である」(6)、「租税構造に先立って所有権といったものは存在しない」(82)、「あなたが実際に稼いだものが課税前所得であり、その後に政府が登場してそのいくらかをあなたか…