僕はどちらかというと、行動するタイプの人間ではなく、考えるタイプの人間。渡邊二郎氏の言葉を借りるならば、「打てば響くような臨機応変の利発な人」ではなく、「ものごとの意味を<深く>考え、受け止め直し、熟慮と反芻を繰り返して、事柄の本質を咀嚼」しようとする人間だ(渡邊二郎『ハイデッガーの「第二の主著」『哲学への寄与試論集』研究覚え書き』171)。
しかし、仕事上においては、臨機応変で利発な人間を演じる必要がある。その役を演じ切るためにビジネス書は有効だから、社会人になってからは、ビジネス書をよく読むようになった。今日読んだのは、ハロルド・ジェニーン『プロフェッショナルマネジャー』。
- 作者: ハロルド・ジェニーン
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2004/05/15
- メディア: 単行本
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本書では、「三行の経営論」が提示されている。
本を読む時は、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。(3)
本を読む時も終わりから読むんやけど…というのはさておき、ジェニーン氏はさらに次のように語る。
もっと単純かもしれない別の言い方をすればこうなる。ー自分は何をやりたいのかをしっかり見定め、それをやり始めよ。
しかし、言うは易く、おこなうは難しだ。肝心なのはおこなうことである。(51)
そう、「肝心なのはおこなうこと」である。人は自分のこと以外であれば、いくらでも口を出す。でも、自分のこととなると、この「おこなうこと」ができないのだ。「おこなうこと」ができない理由の一つは、おそらく「たいていの人は自分が“失敗”と見なすものに対して自分を守る能力を身につけることに多大の時間を費やす」(195)からだと思う。「人は失敗から物事を学ぶのだ」(195)というジェニーン氏の言葉は重要で、さらに言えば、失敗から物事を学んでいる以上、失敗と名指したものは失敗ではないのだ。
ところで、本書で興味深かったことの一つは、「机の上が散らかっている」ことに対する評価である。
多年にわたる私の経験からいって、机の上になにもでていない、きれいな机の主は、ビジネスの現実から隔離されて、それを他のだれかにかわって運営してもらっているのだ。もちろん、たいていの場合、本人はそうは思っていない。(166)
トップ・マネジメントにーいや、ミドル・マネジメントにでもー属する人間にとって、当然なすべき程度と水準の仕事をしながら、同時に机の上をきれいにしておくなど実際からいって不可能である。(167)
多くのビジネス書や自己啓発本が、整理されたきれいな机を推奨する中で、本書のこの指摘は、散らかった机の僕にとっては、非常に励みになる。これからすべき仕事、現在進行中の仕事が盛りだくさん、直面している問題を解決するための資料、その都度起こりうる問題に対応するための資料、計画全体を把握するための資料等々、迅速的かつ効率的に仕事をしようとしたら、机は散らかってしまう。そして、自分の部屋も…。
最後に、完全に同意するジェニーン氏の発言を紹介。
いつも人からたずねられる、あるいはだれもが自分自身についてたずねる質問がある。ーもしもう一度人生をやり直すとしたら、違ったようにするか?私はそうは思わない。今、自分の過去のすべてを顧みる時、私は自分がビジネスの世界で過ごしてきたすべての歳月を楽しんだと断言できる。(306)
僕は、様々な「失敗」を繰り返してきた。でも、そこから多くのこと学んだ。人がどのように言おうと、僕が経験してきたことはその限りにおいて「失敗」ではない。今ならそう断言できるし、だからこそ、苦難は多々あるけれど今生きているこの瞬間を楽しんでいると断言できる。