yamachanのメモ

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小松詩織『小松詩織が教える 司法試験・予備試験 合格のベストプラクティス』

 様々な活動をしながら大学在学中に司法試験予備試験に合格、翌年司法試験に一発合格をしたという実績を持つ、小松詩織さんによる勉強法が描かれた一冊。短答対策、論文対策、論文答案作成、予備試験口述対策、それぞれの「ベストプラクティス」が説明されているので、司法試験・予備試験を受験する方にとってはもちろん、その他資格試験や、日々の勉強法としても役立つ内容となっている。
 例えば、「短答対策のベストプラクティス」では、「過去問を大事にする」という試験勉強の鉄則に対して、過去問を大事しなければならない理由、過去問集を解く意味を意識することの重要性が指摘されている。そして、短答試験は「問題文の肢と自分の脳の引き出しにある知識との「照合」作業」であり、その過去問を解く意味は「照合のために必要な引き出しの数を増やして整理すること」(7)であると小松さんは語る。これは試験対策に留まらず、知識を習得することを目的とした勉強法としても役立つプラクティスである。
 また、「論文対策のベストプラクティス」での論証との向き合い方も勉強法として興味深い。論証を使いこなすまでのレベルとして、「レベル1:論点・論証を知らない」「レベル2:論点・論証を知り、まずはそのまま暗記しようとする」「レベル3:論点・論証を事案に応じて変容させることができる」があり、レベル2からレベル3に到達するためには、「論点・論証の基本形(キーワードや判例の言い回し)を暗記してマシーンのように吐き出せるように」(50-1)になる必要があるというのだ。この「基本形を暗記する」ということを苦手とする、避けようとする社会人は少なくないが、本書で語られているような「型」を暗記することは、仕事に応用していく上でも必要となる。
 「論文答案作成のベストプラクティス」で取り上げられている「問題の読み方」の中の「マーキングの方法」も、試験だけではなく日常の仕事においても役立つプラクティスである。論文試験の問題においてマーキングすべき事実として、年月日、略語、設問に答えるための誘導、積極的事情、消極的事情、登場人物とその行為のうち重要な事情、設問における追加的事情と解答すべき項目が挙げられている(70-1)。もちろん、これらの項目そのものを日常の仕事に当てはめることはできないが、時系列や登場人物を把握し、重要な事実や事情を押さえておくためにマーキングするという小松さんの実践は、様々なシーンで応用できる。
 その他にも、ノルマを立てずにステム手帳を活用した達成型の管理、机を片付けないで文献を開きっぱなし、出しっぱなしにしておいて、教材を有機的につなげる「教科書横断勉強法」(116)、こだわりの文房具等、多面的に勉強法が紹介されている。勉強法に悩んでいる方は、まずは本書で紹介されている勉強法の「型」を習得し、そこからそれぞれに見合った勉強法を見つけていくのが良いだろう。何より、これら勉強法の背景にある小松さんの「魂」を共有することが重要である。小松さんは次のように人生観を語る。

激動の時代に偉業を成し遂げた人々の多くは、その瞬間に巡ってきたチャンスを逃さず自分のものにしようと、がむしゃらに生きていたに違いない。一つのチャンスが次のチャンスを呼び、未知の分野の先駆者となっていったのだろう(ⅰ)

この人生観・ビジョンこそが、小松さんの効率的な勉強法の追究、そして数々の活動を衝き動かしているのである。