小西砂千夫氏を知ることになったのは、働き始めたときに、父親から「この本は読んでおいた方がいい」と、『地方財政改革の政治経済学』を勧められたことがきっかけである。
「実務をしていく中でも、理論的な思考が必要だから」みたいなことを、当時父親から言われた記憶があり、「それはその通りだ」と思った記憶もある。ただ、経済学や政治・行政学を専門としていない、実務も知らない僕にとってはとても難しい本で、当時はよくわからずに読んだ。でも、「理論と実務を結ぶ思考」の重要性を本書から学び、小西砂千夫氏の著作を読むようになった。
ちなみに、本書の「おわりに:時代的風潮との折り合いのなかで発想すれば」の末尾で書かれている言葉に、当時の僕は大きな「力」をもらった。
官僚批判からは何もよきものは生まれてこない。いずれ時代的風潮が変わるなかで忘れ去られていくものである。自立した個人が自治を担うという夢は見果てぬ夢であって、それに傾きすぎるのはロマンにすぎず、それを前提に制度設計はできない。民主主義は、残念ながら大局的な判断よりも近視眼的な思考と結びつくことが宿命である。(310)
僕が現在の職を選んだのは、小西氏のこの言葉と同じ問題意識があったからである。そして、今でも、根底にはこの問題意識がある。
さて、今日再読したのは、小西砂千夫『基本から学ぶ 地方財政』、同『地方財政のヒミツ』、小西砂千夫・松木茂弘共編著『実務から読み解く 地方財政入門』の3冊。
おそらく、能力的にも、性格的にも、自分が財政部局に配置されることはないと思うけど、いや配置されることはないと思っているからこそ、財政の仕組みについて学びたいという思いがあり、予算要求の時期にあわせて再読してみた。
いつの間にか職場の財政担当みたいなことになってしまい、財政部局の方と話す機会が増えたこともあってか、以前よりも読みやすくなっており、とても勉強になった。特に、地方債に関することについて、財政部局の方と話しても「??」ということがあり、質問をしても明確な説明がなかったことについて、これらの書籍を読んで「あぁ、そういうことだったのか」と納得することが多かった。
仕事をしつつ勉強する楽しさの一つに、上記のような「納得のプロセス」がある。勉強することで仕事の質が高まり、仕事をすることで勉強の質も高まる。仕事を引き受けることは重荷になるけど、重荷を背負う楽しみもあるんだな、と。