yamachanのメモ

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島田正樹『自分の楽しさは自分でつくる!公務員の働き方デザイン』

 本書は、公務員が「自分らしく主体的に働く」(2)ために役立つ行動や考え方を、「仕事」「人間関係」「心のあり方」「プライベート時間」「キャリア」という5つの「デザイン」の観点から論じている。「全体の奉仕者である公務員が自分らしく主体的に働くには、業界特有の難しさがある」(2)一方、「制約があるからこそ」(3)、主体的・積極的にデザインしていく必要性と楽しさがある、このことを実感することができる。
 これからの公務員にとって必要なスキルとして「想像力」が取り上げられている。「想像力は「想像できる力」と「想像する習慣」の掛け算」(15)であり、大切なのは「想像する習慣」であると著者は指摘する。「想像する習慣」とは、「想像という行動が、必要なときにちゃんと実行できるくらい、習慣化されている状態のこと」(15)であり、「想像する習慣」がないと、必要なとき・適切なタイミングで、想像するという行動が実行できない。そうすると、「想像する習慣がゼロなら、想像力はゼロ」(16)になる。この習慣を身につけるには、「さまざまな仕事を通して想像を繰り返す」(16-7)必要がある。
 多くの職員が悩む人間関係、特に苦手な上司について、著者は次のようにアドバイスをしている。

どんな上司でも苦手に感じる部分が一つや二つあるのが当り前という前提で上司と向き合ってみてはいかがでしょうか。
上司の苦手な部分とは工夫して付き合いながら、苦手ではない部分と向き合う時間を増やすことができれば、その職場で自分らしく働き、自分の力を発揮することにつながります。そのために必要なのは、一緒に仕事をする上司のどこを苦手だと感じるのか把握し、分析すること。(71)

上司の苦手な部分にまともに向き合うのではなく、この「距離を取った観察」が有効であることは、個人的な経験からもよくわかる。そして、この「距離を取った観察」によって判明する苦手な部分について、自分自身にも同じようなところは無いかと自らを省みることで、職員としても人間としても成長していくことができるであろう。
 「心のあり方をデザインする」では、渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を取り上げ、「置かれた場所であきらめず、最善を尽くし、幸せになりなさい」(90)と著者は語る。つまり、人事異動で希望が叶わなくても、その部署で仕事と向き合い、最善を尽くし、幸せになるということである。そのためには、「自分軸」と「職場軸」の二つの軸に着目し、「「主体的に」自分の異動に意味づけする」という方法がある(92)。僕の場合では、用地担当部署への再度の配属について、自分軸として「さらなる専門性の追求」「職員への知識・経験の継承」、職場軸として「事業推進のための重要な役割」という点から意味づけをしてモチベーションを維持することができる。
 プライベート時間について、著者は「NPOや地域活動に参加するなど、役所の名刺ではない業務外の「2枚目の名刺」を持って、自分が望む社会の実現のために活動すること」(137)を勧めている。一方で、「「地域に飛び出す」ことを公務員に押し付ける空気にも、ある種の窮屈さを感じることがあります」(142-3)と語っているところが興味深い。「地域に飛び出すこと」に固執している方を見ると、逆に「自分の価値から飛び出せていない」と感じるから、「窮屈さを感じる」という気持ちはよくわかる。「やりたいと思ったときに、できる範囲でやればいい」(143)、まさにそのとおりである。
 また、社会が大きく変化していく中で、公務員にとって必要となる「公務員の新・自由七科」(174)を著者は提案している。それらは「学ぶ力」「聴く力」「問う力」「つなぐ力」「デザイン力」「越境力」「自己理解力」である。この「公務員の新・自由七科」は、「あくまで新しい知識やスキルを習得する土台をつくりながら、使い慣れた知識やスキルを時代の変化に合わせて使いこなすために必要な考え方や価値観の変化をもたらしてくれる」(179)。そして、大切なことは「真に解決すべき課題と向き合う「自由」を手に入れて、組織ではなく、住民に貢献できる公務員にバージョンアップすること」(179)なのである。
 本書には「自分らしく主体的に生きる」ための「行動と考え方のデザイン」が満載であり、そこから自分らしさの「デザイン」を考えることもできるであろう。それを後押しするように、「人との関係に悩んだら読む本」「キャリアについて考える時に読む本」「価値観を変えるために読む本」「仕事もプライベートも充実させるために読む本」という分類で参考文献も掲載されている。公務員として働く自身の幸せのために、そして住民の幸せのために、ぜひ読んでほしい一冊である。