yamachanのメモ

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工藤勝己『一発OK!誰もが納得!公務員の伝わる文章教室』

 「国・都・区という3つのステージで実務に携わり、10年以上管理職として文章を書いてきた」(3)現役公務員による、文章の書き方の実践本。例文を紹介しながら、添削指導する形式で解説しているため、大変わかりやすい。文章の書き方を学ぶ研修がない自治体職員にとって、貴重な一冊である。
 文章を磨くことで公務員が得られるメリットとして、著者は次の3点を取り上げる(13)。

①仕事がうまく進むようになる
②仕事の成果を大いに楽しむことができる
③仕事の醍醐味を存分に味わうことができる

これは経験的にもそのとおりで、「公務員の仕事の中で「文章を書く」という行為が占める比重は極めて大きい」(13)ため、文章がうまいと仕事がうまく進むようになり、仕事がうまくすすめばその成果を楽しむことができ、仕事を楽しむことができれば仕事の醍醐味を味わうことができるという、プラスの連鎖が生じる。
 昇任試験の論文や仕事での文書で特に目にするものが、「文章のねじれ」(26)と「難解で紛らわしい文章」(50)である。「文章のねじれ」とは、「主語と述語の関係が破綻している状態」(26)で、若手だけではなく、中堅・ベテランでも、このような文章を書く職員は少なくない。また、「難解で紛らわしい文章」とは、目的と手段が混在した語順で並んでいるものである。このような文章に出会った時は、それぞれの文が「目的」「手段」のどちらに該当するのか、文章を作成した職員に確認し、そこから語順を並び替えるよう指導している。
 「最近、コピペの達人が増えてきたように感じます」(173)と本書でも指摘されているとおり、前任者の文章を一部だけ修正したり、ネットから検索したものを寄せ集めたりした文章を目にすることが多い。このような状況に対して、著者は次のように述べる。

たとえ同じ案件であっても、オリジナルの文章を作らないと、仕事の醍醐味も達成感も味わうことはできません。さらに、表現力を鍛えるせっかくの機会を逃すことにもなってしまいます。効率も大切ですが、コピペはほどほどにしましょう。(173)

仕事を処理していく上で、自分で文章を考えるのは、コピペよりも効率は悪いかもしれない。しかし、自分で文章を書くことは、仕事の楽しみ・醍醐味でもあり、「文章を磨けば公務員人生が豊かになる」(187)のである。本書を手にして、「文章を書く」習慣を身につけ、仕事に楽しさや醍醐味を見つけることで、豊かな人生を歩む職員が増えてほしい。そして、そのような職員が増えることは、市民サービスの維持・向上、魅力あるまちづくりにもつながるだろう。