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小田順子『令和時代の公用文書き方のルール-70年ぶりの大改定に対応』

 公用文のルールである「公用文作成の要領(昭和27年内閣官房長官依命通知別紙)」の見直しについて検討が行われ、「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」が公表された。本書はこの報告書に沿って公用文の書き方を解説している。

第1章 公用文の分類と基本的な考え方
第2章 表記の原則
第3章 漢字の使い方
第4章 用語の使い方
第5章 文の書き方・文体
第6章 情報の示し方(文章の書き方)
付録  
1 送り仮名の対照表(公用文と広報文)
2 経済用語の組み合わせ表
3 敬語の使い方

 第1章では、公用文の基本的な考え方、公用文の分類について解説している。そして、公用文と広報文への書き換え例を示し、「言葉の選び方の違い」「タイトルの違い」「導入部(リード)で伝わる内容の違い」(7)という点から比較を行っている。また、公用文のわかりやすさや正確さについてのポイントも解説している。著者が言うように、まずは本章で「令和時代の公用文」の概要を理解しておくことが重要である。
 第2章以降は、具体的な漢字や用語の「使い方」、文章の書き方を詳細に論じている。著者のアドバイスどおり、「机上に本書を置いて、辞書代わりに」使用するのが良いだろう。しかし、より実用的に活用するために、まずは一度通読することをオススメする。なぜなら、具体的にどのようなルールがあるのかを一定把握した上で辞書的に使う方が、仕事の効率を上げることができるからだ。また、本書にはPDFファイルを活用した常用漢字のチェック方法、Wordの校正機能や文書の標題・見出しの設定方法等が具体的に解説されている。さらに、国民・住民の声を聴くことを目的としたYahoo!検索の利用方法も紹介されている。これらのツールを必要に応じて活用していくためにも、本書を一読しておいた方が良いだろう。
 付録には、「敬語の使い方」が説明されており、これも役所仕事で重要なものである。例えば、お客様に対して「ご利用できます」は誤りで「ご利用になれます」「ご利用いただけます」が正しい表現、「部長様」は誤りで「○○部長」が正しい表現、というような事例が取り上げられている。最近では、公用文に限らず、このような敬語についても「細かいことは気にしない」という風潮もあるが、全ての市民・職員がそのように思っているわけではなく、その結果、この「細かいこと」によってトラブルが生じることもある。だから、「細かいもの」であっても、ルールを把握しておくことは仕事をしていく上で重要となる。
 本書のキーワードの一つは「行動につながる」、つまり、「「読み手にどのような行動を起こしてほしいのか」を明確にして書くこと」(2)である。まさに、この本自体がこの「行動につながる」内容になっており、それぞれの現場で役立つ一冊と言える。そして、職員一人一人がこの「公式文章のニューノーマル」を実践することによって、市民サービスも充実していくことになるだろう。