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髙橋邦夫『DXで変える・変わる自治体の「新しい仕事の仕方」-推進のポイントを的確につかみ効果を上げる!』

 元自治体職員で地域情報化アドバイザーとして自治体の情報化に携わってきた髙橋邦夫さんが、「自治体DX推進のヒント」(ⅱ)を語っている。「はじめに」で指摘しているように、「デジタル化に則した働き方に変えるためには、規則や要綱の改正とともに、職員の意識改革が必要」(ⅱ)であり、そのために最適な一冊と言える内容である。
 まず、自治体DXとは、「これまでの業務をデジタル化してそのまま行う」自治体のデジタル化とは違い、「デジタル技術を用いて仕事の進め方を効率化・高度化(スマート化)する」ことであると、著者は指摘する(6)。つまり、業務の仕方・進め方を変える取組みなのである。
 仕事を効率化・高度化するといった業務改善は従来からあるが、従来の業務改善の取組みが所属部署をのみを対象とし、部署間を横断するようなものではなかったのに対し、自治体DXは「部署間の垣根を越えた業務そのもののあり方・勧め方を変える取組み」(7)という特徴を持つ。つまり、一つ一つの現場・職場だけではなく、組織全体を視野に入れた働き方改革が求められている。
 にもかかわらず、「情報システム部門の拡充や名称変更でDX推進部門を作っている自治体が多数見受けられる」(15)という状況である。そこで、自治体DXの意義を達成するため、著者は「情報システム部門と業務(行政)改革部門とを合体させる」(16)ことを提案している。この「当たり前」のことに取り組めていない自治体が存在する状況において、非常に重要な指摘と言えよう。
 また、「資料のデジタル化で重要なのは、「資料をデジタルで見ることを前提に作成する」こと」(25)という「当たり前」の指摘も重要である。なぜこの「当たり前」ができていないのか。それは「資料をデジタル化することが目的」(25)となっており、デジタル化して保管した資料へアクセスするということを意識できていないからである。この問題を解決するには、「資料をデジタル化するだけでなく、会議そのもののルールも見直して、デジタル社会に相応しい会議のあり方を考える」(26)といった、意識改革と業務改革が必要となる。
 そして、自治体の業務改革を成功させる上で欠かせないものとして、次の5つの要素を挙げている(166)。

規則・ルールの見直し
職員の意識改革
ICTツールの活用
ノーマライゼーションバリアフリー
執務環境の改善

著者が指摘するように、「この業務改革の手法は、自治体DXそのもの」(166)である。
 本書には、日本におけるデジタル化の取組みや、情報セキュリティの基礎についても説明があり、デジタル化に関する基本的な知識の確認としても役立つ。ICTツール導入にあたって起こり得る課題とその解決策についても、具体的かつ実践的に論じられており参考になる。自治体職員として働く者は誰もが自治体DXの当事者であるから、より多くの職員が手にしてほしい一冊。