yamachanのメモ

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北田暁大・白井聡・五野井郁夫『リベラリズム再起動のために』

リベラル再起動のために、まずは広く横につながることが大切であるが、そのためには最低限共有できる点を確認する必要がある。北田暁大氏・白井聡氏・五野井郁夫氏の三者が同意できることは、以下の点である(116-7)。

リベラリズムにおいては機会の平等が重要。

・機会の平等を保障するためには、正義に適った法制が必要。

・スタートラインを揃えるには、人々の持つ財を揃える必要。

・再配分に重点を置き、かつ個々人が自由にそれぞれの幸福を追求できる財と制度を提供するのが国家の義務。

つまり、「底上げをする左翼」(55)が必要ということである。北田氏の言葉を使えば、「リベラルなり左派の基本的な理想は、「食える社会、安心できる社会の提供に国家が責任を持つ」ということ」(139)になる。北田氏は次のようにも指摘する。

必要なのは、正義・権利の貫徹とともに具体的かつ明示的、そして実行可能な幸福の姿を示すこと、そしてその実感を有権者に共有してもらうこと、有権者のニーズを可能なかぎり精査し、その対応について明確にしていくこと。自民のように反差別法や女性政策を切り貼り的に、その場しのぎ的に示していくのではなく、それらの関連性と構造をわかりやすく問題化していくこと。

対抗すべき野党に決定的に欠如しているのはそうした「幸福」への意志表示である。(205)

社会政策的な面を見据えた北田氏の発言は重要なものであるが、行動において「切り貼り的に、その場しのぎ的に」見える野党が、理念において連帯できるのかは疑わしい。本書は「リベラル再起動」の困難さを示す一冊とも言えよう。