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『表現者 クライテリオン11 特集:「大阪都構想」で日本は没落する』

 特集のタイトルにある、「大阪都構想」によって「日本は没落する」という論理が気になって、『表現者 クライテリオン11 特集:「大阪都構想」で日本は没落する』を読んでみた。以下、大阪都構想と日本没落とが関係ありそうな発言をメモ。

柴山桂太:大阪都構想が圧勝に終わったりすれば、日本はせっかくの転換のチャンスの芽を摘み取ってしまうことになる。世界全体で新自由主義グローバリズムへの反省が高まっている中で、日本だけがさらにそれを推し進めるという悲惨なことになりかねないんです。(24)

浜崎洋介:柴山さんがおっしゃるように、今回の大阪都構想が、日本の未来の「民主主義」を占う上で相当に重要だというのは、その通りだと思います。九〇年代あたりから持て囃されてきた「無党派層」と言われている人たちが、かろうじて「サムウェアーズ」的な矜持を持っているのか、結局「エニウェアーズ」的は軽薄さに流されるのか、それが問われることになるのでしょうね。(24)

浜崎:「大阪都構想」は、大衆のルサンチマンを糧にして権力ゲームを生きる「悪魔」が仕掛けた一つの花火だということです。その意味でも、今回の住民投票は、今後の日本を占う試金石になるでしょうね。(26)

浜崎:今回、大阪都構想に「NO」を言えば、「求めているのはその方向(コンサル型の改革、グローバル化新自由主義の改革)ではない」という意思が示される。

浜崎:過剰な未来主義、過剰な合理主義、過剰な啓蒙主義、加速主義でも何でもいいんだけれど、そこに飲み込まれつつあるのが現代の大衆人なんでしょう。自分の意識と無意識との関係をしっかりと見据えて、それを調整することができるのかどうか、それが今回問われているんでしょうね。(35)

藤井聡:政治主導で提案された都構想に行政が染め上げられつつある今の大阪の風景というのは、そういう「アフター・コロナの独裁政治」という近未来の日本の政治風景となっているわけです。だから、今この都構想の暴走が止められるかどうかが、日本の民主政治を守れるかどうかの「関ヶ原」になっていると言えるんだと思います。(51-2)

藤井:政治家と世論、さらにはそこに行政も含めて皆一体化して暴走し始める、という悪夢のポピュリズムというか全体主義が生じやすくなってるわけですね。で、その象徴が、いま大阪で起こってる都構想騒動だ、という話ですね。だとするとこの都構想現象は、大阪から日本全体に確実に飛び火しますね……。日本国家としても、相当ヤバイところに来てるわけですね……。(52)

藤井:この民主主義の時代には、政治家は常に「市民のために正しいことを言い続ける」か、それとも「自滅覚悟で長いものに巻かれるか」の二者択一、ジレンマに直面しているわけですね。そのジレンマを明確に自覚しながら、「正しいことを言い続ける」という政治家がこの世から消えて無くなれば、民主主義の世界は確実に地獄に落ちます。そして今まさに、そのジレンマを通して大阪は自滅に向かい始めているわけで、それが日本全体の未来予想図になっているわけです。それを止められるかどうかは、「にもかかわらず」と決意し、ただしいことを言い続ける政治家の命がけの決意以外に何もありません……。(54)

藤井:今回大阪の街が確実に衰退することが確定するわけですが、日本国家として、大阪という第二の都市、西日本の中心都市が没落するのをみすみす見過ごすのは、日本の没落そのものですから……。(68)

藤井:こんな理不尽なことが白昼堂々と認められてしまえば、もう日本ではどんな詐欺話、ウソ話であろうと、政治権力を握り、TVも掌握しつつ適当にデマを流布させ続ければいいんだ、ってことになって、日本の民主主義は激しく腐敗していくことになると思います。都構想は大阪を守る戦いなだけでなく、日本の民主主義を守る戦いでもあると思います。(69)

森裕之:このまま「大阪都構想」が実現すると何が起こるのか。「住民サービス水準は低下しない」と信じた特別区の住民は、財政削減を通じた福祉や教育の劣化に怒りを感じる。大阪の支配的政治家は自らの責任を棚に上げて、それを国や経済状況のせいにする。政治家の言説が正しいのかどうかなど誰も検証せず、それをただ鵜呑みにする。そこで発せられる攻撃的な言葉が住民の怒りをあおり立て、その矛先を国の政治へと振り向けさせる。コロナ禍での報道に見られるように、それがマッチョな「改革」政治家の偶像を作り上げ、彼らが次の国を担うリーダーであるかのような空気を育てる。その先に待っているのは、対立と攻撃によって人心を集める暴力的政治のまん延である。(90-1)

表現者クライテリオン 2020年11月号

表現者クライテリオン 2020年11月号

  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: 雑誌