yamachanのメモ

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北田暁大「知的緊張を追体験せよ-”理論武装”のためのブックガイド海外編」(『論座2005.7』)

北田暁大氏は、近代リベラリズムを特徴づけるものとして、「私的所有、自己決定、自律といった個人主義的な契機」と、「市場主義(自己調整機能への着目)」を取り上げている(79)。それは以下のように分類される*1

私的所有:ジョン・ロック『市民政府論』

自己決定:ジョン・スチュアート・ミル『自由論』

自律:イマヌエル・カント『道徳形而上学原論』『実践理性批判

そして、「20世紀以降のリベラリズムは、こうした古典の余白に書き加えられた注のようなもの」(79)で、新たな古典としてはアイザイア・バーリン『自由論』、カール・ポパー『開かれた社会とその敵』、フリードリッヒ・フォン・ハイエク『法と立法と自由』、ジョン・ロールズ『正義論』、ロバート・ノージックアナーキー・国家・ユートピア』を挙げている。その他、ジョン・ロールズやロナルド・ドゥオーキン、リチャード・ローティなどを取り上げ、以下のように総括している。

私的所有、自己決定、自律、自己調整的市場…リベラリズムとは、19世紀までに提出されていたこうした概念を、政治的・哲学的に活性化させるために言説を再生産してきた欲望と意思の総体である。リベラリズムを「自由主義」から救出するためにも、私たちはリベラリズム自体を読まなくてはならない。(80)

リベラリズムをこのような「欲望と意思の総体」として位置付ける点は興味深い。

*1:アイザイア・バーリンの分類に従えば、ミルは消極的自由、カントは積極的自由の代表格であると、北田氏は説明している。