yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

2020-01-01から1年間の記事一覧

仲正昌樹『現代哲学の最前線』、小川仁志『哲学の最新キーワードを読む』

大きく変化していく世界、その世界を見通すために哲学や思想を学びたいという人はいると思う。僕もその一人であり、仲正昌樹『現代哲学の最前線』と小川仁志『哲学の最新キーワードを読む』は、それぞれ違う角度から現代の哲学を解説している。 『現代哲学の…

戸谷洋志・百木漠『漂泊のアーレント 戦場のヨナス』

帯文が「二〇世紀の破局を二人はどう生き、そこに何を見たのか。「二一世紀の全体主義」に警鐘を鳴らす友情の記録」とうたっているように、本書はハンナ・アーレントとハンス・ヨナスの生涯を、二人の交わりを視野に入れて追いつつ、それぞれの思想を描いた…

「通学路とは」という問いから仕事について考える

国や県から照会があったとき、迷うことが多い概念の一つに「通学路」がある。多くの場合は「学校長が指定する道路」についての照会だけど、まれに「交安法(交通安全施設等整備事業の推進に関する法律)に基づき指定されている道路」についての照会がある。 そ…

蔭山宏『カール・シュミット』、古賀敬太『カール・シュミットとその時代』

蔭山宏『カール・シュミット』は2020年6月に出版されており、「あとがき」においては、新型コロナウィルスの世界的流行について「シュミットのいう例外状況の発生である」(257)という指摘がある。「緊急事態」という言葉が日常に浸透した今、シュミットの…

重田園江『統治の抗争史-フーコー講義1978-79』

私が学生時代の頃、「セキュリティ」は社会学や政治学において注目されたテーマの一つであり、その中でミシェル・フーコーは「生権力」や「規律権力」といった概念を通じて知った人物であった。そこでのフーコーは「使う」ものであり、「読む」ものではなか…

ピエール・ロザンヴァロン『良き統治-大統領制化する民主主義』

「本書の主たる目的は、行使の民主主義の輪郭を確定すること」(15)であり、そのために①「統治者と被治者の関係を規律すべき原理を把握すること」と、②「「良き統治者」になるために要求される人格的な資質を確定すること」(16)を検討している。そして、①…

小紫雅史『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』

奈良県生駒市長が、これからの自治体像、職員像、地域像、そして市民像を描いた一冊。本書の特色は、生駒市の取組事例を紹介するだけではなく、様々な概念を提示することで理念を共有し、実践へと導こうとする姿勢が見えることだ。例えば、本書のタイトルに…

デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について-「あいだ」の空間の民主主義』

大著『負債論』の著者であり、近年では「bullshit jobs」という概念を提示して注目を集めているデヴィッド・グレーバーが民主主義を論じた注目すべき一冊。邦訳のタイトルと副題からもわかるように、本書は民主主義の起源について、そして民主主義が成立する…

羅芝賢『番号を創る権力-日本における番号制度の成立と展開』

マイナンバー制度と言えば、プライバシーの問題やその利便性を中心に議論される傾向にあるが、本書は制度の歴史的発展に注目する。そうすることで、マイナンバー制度がなぜ現在抱えているような問題に直面しているのかが明らかになり、その解決策を考えるた…

橋爪大三郎『国家緊急権』

本書の出版は2014年。「公共の利益は人権を上回るのか」(33)として次のような例が挙げられている。 たとえば、どこか外国で、悪質な伝染病が流行しているというケースを考えてみましょう。 この国の人民には、居住地選択の自由や移動の自由がありますから…

西尾勝『行政学』「第5章 現代国家の政府体系」メモ

・中央地方関係の類型 アングロ・サクソン型=分権・分離型(イギリスを母国として英連邦諸国、アメリカに普及) ヨーロッパ大陸型=集権・融合型(フランスを母国としてラテン諸国、ゲルマン諸国に普及) 分権・分離型の市町村の自治権は、事務権限の範囲に…

西尾勝『行政学』「第2章 官僚制と民主制」メモ

・法治主義の3原理:①法律優越の原理、②侵害留保の原理、③法律による裁判の原理→この3原理のすべてを具備した法治主義が確立されないと「法律による行政」の原理(法治行政原理)は不完全である。 立法・司法・行政の分立に関連してすでに確立済みの法治主…

東浩紀『哲学の誤配』

日本を代表する思想家であり批評家、東浩紀氏の過去・現在・未来を知るうえで最適の一冊である。東氏の思想に通底しているのは、タイトルにもある「誤配」。「誤配とは自由のことである。そして、ぼくがこの本のなかで繰り返し主張しているのは、政治や公共…

富永京子『みんなの「わがまま」入門』

本書を中学生や高校生の時に読んでいたら…富永京子『みんなの「わがまま」入門』を読むと、そのようなことを考えてしまう。その理由は、著者の社会に対するアプローチと、僕が学生時代に勉強してきた社会に対するアプローチが異なるからだと思う。 著者のア…

山本圭『アンタゴニズムスーポピュリズム<以後>の民主主義』

2014年に、エルネスト・ラクラウ『現代革命の新たな考察』の翻訳書を出版して以降、毎年のように著書・訳書を出版してきた著者が、各媒体で執筆してきたものを加筆・修正してまとめられたものが本書である。それぞれ異なる媒体で執筆されたものであるにもか…

森政稔『戦後「社会科学」の思想ー丸山眞男から新保守主義まで』

「若い学生たち歴史的な感覚を持ってもらいたい」(6)という思いから書かれた本書は、戦後の政治学を中心とした社会科学の歴史が描かれており、学生に限らず、「現代」社会を生きる我々にとっても参考になる力作である。また、本書はこの「現代」という言…

横田祐美子『脱ぎ去りの思考ーバタイユにおける思考のエロティシズム』

『脱ぎ去りの思考-バタイユにおける思考のエロティシズム』というタイトルの「脱ぎ去り」「エロティシズム」という言葉からは、僕たちがよく知る「エロティシズム」のバタイユ像を想像するが、本書の主題は冒頭で語られているように、「彼(バタイユ)の思…