yamachanのメモ

日々の雑感や文献のメモ等

社会学

山崎望[編]『民主主義に未来はあるのか?』

「民主主義に未来はあるのか?」-本書のタイトルになっているこの問いに対して、時間と空間、そして学問領域を超えてアプローチする野心的な一冊である。このような横断性を有する著作は、まとまりの無さ故の読みづらさという欠点を持つこともあるが、編者…

北田暁大・白井聡・五野井郁夫『リベラリズム再起動のために』

リベラル再起動のために、まずは広く横につながることが大切であるが、そのためには最低限共有できる点を確認する必要がある。北田暁大氏・白井聡氏・五野井郁夫氏の三者が同意できることは、以下の点である(116-7)。 ・リベラリズムにおいては機会の平等…

宮台真司・仲正昌樹『日常・共同体・アイロニー』

本書において、宮台真司氏はリベラリズムの「端的な事実性」を説いている。端的な事実性とは、「「人間とはこの範囲だ」とか「我われとはこの範囲だ」といった区別の線引きについての事実性」のことであり、「こうした事実性なくして機能しない」(64)とし…

宮台真司・藤井誠二・内藤朝雄『学校が自由になる日』

宮台真司氏は、ジョン・スチュアート・ミル『自由論』を挙げて、「リベラリズムとは、個人の尊厳を与える、愚行を含めて自己責任でなされる自由な試行錯誤を保証するような社会制度に、価値的にコミットする思想的態度を示すもの」(17)と説明している。ポ…

北田暁大+鈴木謙介+東浩紀「リベラリズムと動物化のあいだで」(東浩紀編著『波状言論S改』)

東浩紀氏は、自由の概念を「所有権にもとづいたリバタリアニズム的なものと、社会の異種混淆性や他者への開放性を重視するリベラリズム的なもの」(168)に分ける。前者が他者の迷惑にならない限りは何をやってもよいという自由で、後者が他者のことも考えて…

北田暁大「現代リベラリズムとは何か」(仲正昌樹・清家竜介・藤本一勇・北田暁大・毛利嘉孝『現代思想入門』)

北田暁大氏は、「リベラリズム」のアイデンティティについて、「「問い」のレベルでの共通性に同一性の「根拠」を見いだす」(163)井上達夫氏の議論に注目している。井上氏によると、「リベラリズムの自同性の根をなす問い」とは「善から区別された社会構成…

北田暁大「知的緊張を追体験せよ-”理論武装”のためのブックガイド海外編」(『論座2005.7』)

北田暁大氏は、近代リベラリズムを特徴づけるものとして、「私的所有、自己決定、自律といった個人主義的な契機」と、「市場主義(自己調整機能への着目)」を取り上げている(79)。それは以下のように分類される*1。 私的所有:ジョン・ロック『市民政府論…

稲葉振一郎「「ネオリベ」批判を越えて」(『論座2005.7』)

稲葉振一郎氏は、「新自由主義=新保守主義は、内政、社会経済政策における『小さな政府』論、市場原理主義と、外交におけるタカ派リアリズムとの混合物である」という「ケインズ主義の黄昏とネオリベラルの勝利のお話」(69)を批判的に捉えることから、リ…

大澤真幸「第三者の媒介で「新しい自由」を切り開け」(『論座2005.7』)

大澤真幸氏は、リベラリズムを「自由を、(他者の同様な)自由とは異なる根拠によって抑圧すべきではないとする思想」(46)と定義し、リベラリズムの理念として「個人がこの経験的世界で帯びる偶発的な性質を無化し、還元すること」(48)を提示している。 …

ズンク・アーレンス『TAKE NOTES!-メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』

「成功とは強い意志力と抵抗に打ち勝つ力の産物ではなく、最初から抵抗を発生させない仕事環境の成果である」(50)-本書はそのために、副題にもある「メモ」を始めることを推奨し、その方法論を論じている。そして、この仕事術のモデルとなるのが、ニクラ…

赤堀三郎『社会学的システム理論の軌跡-ソシオサイバネティクスとニクラス・ルーマン』

「『社会学的システム理論の軌跡』という題名が示唆するのは、本書において、社会学的に考えるための道具とされたシステム理論がどういったパラダイムに属するかということが論じられる、ということである」(7)と著者は述べ、システム理論の概念を解きほぐ…

上野千鶴子・鈴木涼美『限界から始まる』

かつて細見和之さんは「書簡文化の終焉」を語ったことがあるが*1、本書が企画され、公開されることを前提とした、そして編集者を介した「往復書簡」であったとしても、「書簡」という形式だからこそ語ることができた、語ることになったことがあるだろう本書…

田村哲樹・加藤哲理編『ハーバーマスを読む』

政治学や社会学、そして哲学の書棚にも置かれるほどに多様な領域に多大な影響を与え、現代を代表する思想家の一人であるユルゲン・ハーバーマスの全貌に迫る一冊だ。第Ⅰ部では討議倫理学や公共圏、法・憲法といったテーマ・トピックに即して、第Ⅱ部ではハー…

『創造観光2017~Magical I-marginal-y Tour~』

まちあるきのツアー本だが、本書を読んで思い浮かべた哲学者がいる。そのうちのひとりがジャック・デリダだ。なぜか?それはツアーのプログラムに組み込まれた短編小説の内容と、小説に出てくる「相田家」の設定による。その設定とは、「相田家は、典型的な…

広瀬義徳+桜井啓太編『自立へ追い立てられる社会』

次期首相候補の一人、菅官房長官が「自助・共助・公助」を唱える今、「公助が酷薄な現代世界を生きるには、何より未完のプロジェクトとしての「強い個人」の育成強化とその自助を前提とした共助しか残されていないとする立場とも異なる」(9)理念を持つ本書…

橋爪大三郎『パワースピーチ入門』

仕事においてスピーチをすることが多くなると思っていたところ、愛読してきた橋爪大三郎氏の新著『パワースピーチ入門』を本屋でたまたま発見。最近は橋爪氏の著作から遠ざかっていたが、本書は橋爪社会(科)学の実践書とも言えるような内容であり、大変興…

西田亮介『コロナ危機の社会学-感染したのはウィルスか、不安か』

世界中をゆるがせている新型コロナウィルス感染症について、2020年前半における感染拡大の経緯と対策を記述し、その状況に対して「走りながら考え」(199)、社会学的分析を行った本書は、コロナ危機に対する見通しを良くし、我々が立ち止まって思考するきっ…

橋爪大三郎『国家緊急権』

本書の出版は2014年。「公共の利益は人権を上回るのか」(33)として次のような例が挙げられている。 たとえば、どこか外国で、悪質な伝染病が流行しているというケースを考えてみましょう。 この国の人民には、居住地選択の自由や移動の自由がありますから…

富永京子『みんなの「わがまま」入門』

本書を中学生や高校生の時に読んでいたら…富永京子『みんなの「わがまま」入門』を読むと、そのようなことを考えてしまう。その理由は、著者の社会に対するアプローチと、僕が学生時代に勉強してきた社会に対するアプローチが異なるからだと思う。 著者のア…

民主主義と偶有性

大澤真幸『現実の向こう』の第1章の中にある「民主主義はどういう政治制度か」の箇所をメモ。 大澤は民主主義の特徴を「どのような敵対関係をも-変形させた上で-受け容れるところ」にあると指摘し、その例としてエルネスト・ラクラウとシャンタル・ムフの…

お買いもの『脱原発の哲学』外

興味深い本がたくさん出版されていて、その中から選ぶのが大変。 まずは、佐藤嘉幸/田口卓臣『脱原発の哲学』。 脱原発の哲学 作者: 佐藤嘉幸,田口卓臣 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2016/02/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 僕は、脱…

お買いもの『有限性の後で』外

前に買っておいた本をメモ。まずは、カンタン・メイヤスー『有限性の後で-偶然性の必然性についての試論』。 有限性の後で: 偶然性の必然性についての試論 作者: カンタンメイヤスー,Quentin Meillassoux,千葉雅也,大橋完太郎,星野太 出版社/メーカー: 人文…

人文知・人文学(の危機)について

『週刊読書人』の2015年12月18日号と2016年1月1日号で、人文知・人文学(の危機)について言及されていたのでメモ。 まず、2015年12月18日号、宮台真司・苅部直・渡辺靖鼎談「政治・社会・人文科学を振り返る」からの抜粋。 宮台 …ハーバーマスが… 『人間の…

読書メモ:ヘーゲルとルーマンについて

ヘーゲル『精神現象学』を読んでいると、なぜかルーマンのことを考えてしまう。一方で、ルーマンは「とりわけカントに興味を持っていましたが、ヘーゲルとマルクスにはほとんど関心がありませんでしたね」とも語っている(『ルーマン、学問と自身を語る』141…

お買いもの『社会システムの生成』外

今日は梅田をブラブラ。発売当初より気になっていた、大澤真幸『社会システムの生成』と、昨年出版された本だが、村井則夫『解体と遡行-ハイデガーと形而上学の歴史』を購入。 社会システムの生成 作者: 大澤真幸 出版社/メーカー: 弘文堂 発売日: 2015/11/…